[dropcap]日[/dropcap]本に戻って来てからちょうど1年ほどが過ぎ去った。この1年間、割と日本のあちこちへ行く機会に恵まれ、行く先々で極力インド料理レストランを試すことにしていた。その中には、日本人の口に妥協してしまった残念なレストランも多かったのだが、本場の味を頑なに守っているところもいくつかあった。
日本人は世界でもグルメな部類に入ると思うが、インド料理に限っては、一般の日本人の味覚を信じてはいけない。最近はネット上で各レストランの評価を簡単に見ることができるが、インド料理レストランの評価は全く信憑性がない。自ら行って確かめるしか方法がないのである。
そこで、インドに10年以上暮らした者の味覚から、日本のインド料理レストランを評価するのも悪い企画ではなかろうと思い、この1年間で特においしいと感じたインド料理レストランを紹介しようと思う。
東京
■ダクシン(Dakshin)
http://www.dakshin.jp/
南インド料理レストランを銘打っているが、メニューには北インド料理もある。今のところ八重洲店と東日本橋店の2つがあるが、僕は八重洲店の夕食時にしか行ったことがない。シェフはインド人。インディカ米使用。大体行くと南インド料理のミールスを注文するが、正に本場の味、本場の品揃えで、毎回満足できる。つい黙々と食べることに集中してしまう。二流インド料理レストランでは食べた後に特にj身体に異変は起こらないが、ここの料理を食べるとスパイスの使い方が本格的過ぎて下痢気味になることがある。これは、「ミミズがいる土はいい土」などと同じく、いいインド料理の証拠である。店内の雰囲気も良い。ちなみに、同名の高級南インド料理レストランがインドにもあるが、それとは全く関連がないようだ。また、八重洲店の近くにはダバ インディアという南インド料理レストランがあるが、ランチ時にしか行ったことがない。大体において日本のインド料理レストランのランチは手抜きであるが、ダバ インディアもランチにインディカ米を使っていないという失態を犯しており、気に入らなかった。いつかディナーを食べてから評価したい。
■シターラ グローブ(Sitaara Grove)
http://www.sitaara.com/
新宿タカシマヤの13Fにあるインド料理レストラン。同系列のインド料理レストランは他にもいくつかあるが、ここしか行ったことはない。ランチ、ディナー共に食べたことがある。シェフはインド人。インディカ米使用。味は本格的だが、高級デパートの中にあることを意識してか、盛りつけなどはオシャレにまとめられていて、インドの5つ星ホテルのレストランを思わせる。客を飽きさせないためか知らないが、メニューが割と頻繁に入れ替わる。ダールがお気に入りだったのだが、前回行ったときはメニューから消えていた。時々フェアもやっており、ベンガル人シェフによるベンガル魚料理などが食べられることがある。ビリヤーニーもある。今まで食べたものはどれもおいしかった。
大阪
■アリーズ・キッチン(Ali’s Kitchen)
http://www.aliskitchen.jp/
心斎橋にあるインド料理レストラン。チーフシェフ兼オーナーのアリー氏はパーキスターン系カナダ人とのことで、パーキスターン料理とした方がいいかもしれない。シェフはパーキスターン人。インディカ米使用。ハラール食材を使っているため、大阪を訪れるイスラーム教徒観光客がよく利用している。店も小さいので、予約した方が無難だろう。日本ビリヤーニー協会から「日本一おいしい」と認定を受けたビリヤーニーが特に有名。イードの日など、年4回のみ、ハリームも提供しているようだが、すぐに売り切れてしまうと言う。メニューは600種類以上、この品数は世界一と豪語している。アリー氏の人柄も面白く、大阪では外せないインド料理レストランである。
名古屋
■ガンダーラ(Gandhara)
名古屋市中村区松原町1-49
052-483-4521
第1・第3月曜日定休
地下鉄東山線本陣駅から徒歩5分ほどの住宅街にある、庶民的・家庭的なインド料理レストラン。シェフはインド人とパーキスターン人。インディカ米使用。ハラール食材使用のため、やはりイスラーム教徒観光客がよく利用する場所となっている。チキン、マトン、ダールなど、要所を押さえたメニューであり、本場の味を守っている。毎週金曜日はビリヤーニーを提供しており、とてもおいしい。日本のインド料理レストランでチャパーティーがあるのでも珍しいのだが、ここには特大チャパーティーがあり、一見の価値あり。酒類はなし。
福岡
■ハラールフード マルハバ(Halal Food Marhaba)
福岡県福岡市東区筥松3-10-13
080-3224-9864
年中無休
JR箱崎駅の近くにあるハラール食材店兼レストラン。レストランと言うより食堂に近いが、完全予約制で、食事をするには事前の予約が必須。オーナーはパーキスターン人。インディカ米使用。とても家庭的な雰囲気の店で、地元のパーキスターン人たちの憩いの場となっている。料理は完全にパーキスターン人向けに作られているので、本場の味を楽しめる。
浜松
■新田寺マハルレストラン
http://www.shintajimahal.com/
国道1号線沿いにあり、自家用車で行くのが便利。ふざけた店名だが、パーキスターン人のシェフが真面目に作っており、おいしい。ダーバーの味がする。メニューも豊富で本格的。要事前予約だが、ビリヤーニーやニハーリーなどもある。「特別なキャンペーン」と銘打って、スタッフに「ライラハ イルラールラー ムハマドル ラスゥールルラ」と3回言うと10%オフ、もしくはドリンク1杯サービスをやっているが、これを厳密にこなすとイスラーム教徒に改宗ということになってしまうので注意。
思うに、おいしいインド料理レストランを探すときのキーワードとなるのは「ハラール」だと思う。最近日本の食品業界でも話題になっている言葉であるが、とりあえずイスラーム教徒向けの食材と理解すればいいだろう。もしインド料理を外食したい場合、「地名+インド料理」などで検索してしまうと、有象無象のカレー店がヒットしてしまって、なかなかおいしいインド料理レストランに辿り着けない。だが、「地名+ハラール」で検索すると、非常に精度が高い情報が得られることが多い。