Dubai 2019

2003年のヒンディー語映画「Boom」に、「Good bye Mumbai, Hello Dubai」という台詞があったのを思い出す。ムンバイーを拠点とする悪党たちがドバイに高飛びする際の台詞だったと記憶している。その頃には既にドバイはインド人にとって人気の渡航先となっていた。いつか行ってみたいと思っていたが、2019年の冬休み、ようやくアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを家族旅行することができた。香港の混乱を受けて運賃が安くなっていたキャセイ・パシフィック航空を利用し、香港経由でドバイを訪れた。12月26日~30日の3泊5日(最後の1泊は機内)の旅行であった。

香港国際空港



 ペルシア湾に面し、シンガポールを模して発展してきた港湾商業都市ドバイは、住民の8割が外国人の国と聞いていたが、実際に降りたって少し滞在してみた肌感覚では、街中にいる人々の9割がインド人かパキスタン人だ。ドバイで働いているのも印パ人、観光しているのも印パ人、と言っても過言ではない。特に印パのホリデーシーズンでもあったので尚更であろう。彼らの話す言語が理解できた都合上、アウェイ感は全くなかった。見ていると、インド人観光客は、まるで本国にいるかのように、ヒンディー語で観光できてしまっていた。もちろん、ドバイを観光するだけの経済的余裕のあるインド人は英語も堪能であるため、たとえヒンディー語が通じない従業員や現地人等に出会っても全く問題ない。日本人にとってハワイが日本語の通じる「国外にある日本」だとしたら、インド人にとってドバイはヒンディー語の通じる「国外にあるインド」である。また、インドにいるインド人は、外国人の目からすると怠け者に映るかもしれないが、ドバイで働いているインド人は、さすがに出稼ぎに来ているだけあって皆働き者で、ドバイの経済は彼らで回っていると言っても過言ではなかった。

ドバイ・クリーク

 ドバイ市街地で宿泊したのはバニアス・スクウェア(Baniyas Square)に位置するリビエラ・ホテル(Riviera Hotel)である。日本人従業員がいるためか、日本人宿泊客が多い。慢性的な渋滞に悩まされているドバイにおいて、メトロ駅やアブラ(渡し船)乗り場とも近く、交通の便もいい。さらに、家族向けの部屋(ダブルルーム2室を接続できる)もあったために、ここに決めた。また、現地に行って思ったが、バニヤス・スクウェアの「バニヤス」とは、インド人商人コミュニティーの「バニヤー」から来ているのではなかろうか。

リビエラ・ホテル(中央)

 リビエラ・ホテルは、海運の要でドバイ発祥の地ともなったドバイ・クリークと呼ばれる入り江に面しており、アブラに乗って向こう岸まで渡るとドバイ旧市街である。この辺りはインド人街にもなっており、ヒンドゥー教寺院もあった。アブラ乗りも大部分がインド人であるように見受けられた。もし、バニヤス・スクウェアが本当に「バニヤー」に由来しているのだとしたら、この辺りにこれだけインド人が多いのも納得である。

アブラ

 ドバイを訪れた一番の目的は、ボリウッド・パークスである。実はドバイには世界唯一のインド映画テーマパークがある。変な話だが、インド映画のテーマパークは今のところインドにはなく、ドバイにあるのである。インドの映画スターも頻繁にドバイを訪れており、映画のプレミア上映が行われることも稀ではない。こういうところからもドバイとインドの強い結びつきがうかがわれる。他に、世界一の高さを誇るブルジ・ハリーファや、世界最大級の水槽を擁するドバイ水族館なども訪れた。また、最後の1泊は、砂漠にあるリゾート、バーブル・シャムス・リゾート&スパに宿泊し、リラックスした。

バーブル・シャムス

 家族連れであるし、短い滞在だったので、とてもドバイの全てを把握し切れていない。よって、特に有益な情報を提供できるわけではないが、それでも何かしらの情報は誰かの参考になるかもしれないので、メモ程度にここに旅行の概要を書き記しておく。

旅の基本情報

 ドバイの通貨はディルハムと言い、略称はAED。1ディルハムが約30円の計算である。安く済ます方法もあると思うが、普通に観光しようと思ったら、物価は高めだ。日本と同じか、それ以上と考えてよい。キャッシュレス決済の浸透具合は意外に中途半端であった。特にタクシーが現金のみしか受け付けないと考えるべきなので、Uberなどの配車アプリを使わず、従来型タクシーで移動する可能性があるならば、常に現金をいくらか持っている必要がある。また、印パ人が多いためか、微妙にチップ文化も存在しているので、 少額紙幣を持っておくとホテルやレストランで心地よいコミュニケーションが取れる。かと言って、街中に両替屋がたくさんある訳でもないのが不便に感じた。

バスタキヤ(ドバイ旧市街)

 ドバイでは既に5Gのサービスが開始されている。だが、5G対応の端末を持っておらず、それを敢えて試すことはなかった。短い滞在だったので、日本の通信会社の海外ローミングサービスを使って済ませてもよかったのだが、敢えて挑戦ということで、現地でSIMカードを購入し、SIMフリーのiPhoneで使ってみた。ドバイではEtisalatとduという2つの通信会社がある。まず、入国審査のときにdu提供の無料のSIMカードがもらえたが、なかなかアクティベートできなかったので、結局使わなかった。次に、預け荷物受け取り場の近くの免税店でduがSIMカードの特売をしていたので、こちらで購入した。1番安いプランの55AEDのものを買ったのだが、アクティベートしていたら誤って通話料のチャージのみに55AEDを使ってしまったようで、データ通信が0Gのままでネットができない状態だった。どうにもならなかったので、オンラインで再び55AEDを支払ってデータ通信容量を確保し、なんとか携帯でネットを使用できるようになった。おそらく正解は、税関を抜けてからduのカウンターで観光客向けの「Tourist Plan」のSIMカードを購入、だったようだ。「Tourist Plan」なら、通話とデータ通信のどちらも可能である。間違えてしまったものの、SIMカードの入手は比較的容易な国の部類に入る。(今のところ最難関はインドだ!)

バーブル・シャムスのランプ

 ドバイの市内交通でもっとも便利なのは、間違いなくメトロ(地下鉄)である。しかし、日本と料金システムが異なるので、慣れるまで時間が掛かるかもしれない。今回は1回しか使わなかったので、とても使い方を助言できるような立場にないが、早速乗り方を間違えてしまったので、その失敗談を織り交ぜて書いておく。まず、路線であるが、グリーンラインとレッドラインの2系統しかないので、単純である。それでも、乗る車両を間違えると逆方向に行ってしまうので、気を付けなければならない。さすがにそれは間違えなかったが、失敗したのは料金の計算方法の方だ。ドバイメトロの料金体系はゾーン制となっており、ゾーンをまたぐごとに料金が上がるようになっている。チケットにはいくつか種類があるが、短期滞在者はレッドチケットの購入を推奨されている。有人の窓口で買う方法と自動券売機で買う方法の2種類があるが、初めての利用の場合は絶対に有人窓口で買うべきだ。自動券売機で買ってみたら、ゾーンの計算を間違えて、出るときに自動改札ゲートが開かず、追加料金を払う羽目になってしまった。

ボリウッド・パークス

 ドバイには、世界唯一となる、インド映画を題材にしたテーマパークが存在する。アブダビとの国境近く、ジャバル・アリー(Jebel Ali)地区に、ドバイ・パークス&リゾート(Dubai Parks & Resorts)というテーマパークのコンプレックスがある。そのコンプレックスを形成するテーマパークのひとつが、ボリウッド・パークス(Bollywood Parks Dubai)である。「ボリウッド」を冠しているだけあって、正確に言えばヒンディー語映画のテーマパークである。例えば、テルグ語映画の「Bahubali」や、タミル語映画界のスーパースター、ラジニーカーントに関するアトラクションは皆無だった。ドバイ市街地からかなり離れた場所にあり、ブルジ・ハリーファなどがあるダウンタウン・ドバイからタクシーで向かったら1時間くらい掛かった。ドバイ・メトロを利用するなら、レッドラインの終点UAEエクスチェンジ駅まで行って、タクシーに乗ることになるだろう。

 ドバイ・パークス&リゾートでは、リバーランド・ドバイという人口の湖を中心に店舗が並ぶ無料のエリアを取り囲むように、いくつかのテーマパークが集合している。手当のボリウッド・パークスはタクシーの乗降場から一番遠いところにあり、リバーランドを越えたところにあった。

ドバイ・パークスの入り口

 チケットは事前にオンラインで入場日を指定して予約すると安くなる。日本円にして一人5千円ほどである。Q-Fastを追加購入すると、全てのアトラクションで列に並ばずに入場することができるようになる。こちらは一人1,500円ほどである。クリスマス・シーズンということで、Q-Fastを使って効率的に園内を回ろうと目論んだが、想像していたほどには混雑しておらず、Q-Fastを買った意味は少なかった。

園内は閑散としている

 ドバイ・パークスに到着したのは午後15時30分頃であったが、園内は閑散としていた。しかも、営業していないレストランばかりで、経営は大丈夫かと心配になった。同園のキャッチコピーでは「16のライドとアトラクション」があるとのことだが、それには野外ショー的なステージも含まれており、建物の中に入って楽しむタイプのものは、実際には以下の7つと考えていいだろう。映画名でリストアップする。

  • Don
  • Lagaan
  • Sholay
  • Dabangg
  • Krrish
  • Ra.One
  • Zindagi Na Milegi Dobara

 この内、ライドは「Don」、「Lagaan」、「Sholay」、「Krrish」、「Ra.One」の5つで、ショーは「Dabangg」と「Zindagi Na Milegi Dobara」の2つである。ライドの内、実際に乗り物に乗って動くのは「Sholay」だけだ。しかも「Sholay」では座席に銃が付いていて、ガッバル・スィン率いる盗賊を撃つミッションを与えられるので、能動的に楽しめる。最後に各個人の点数も表示され、競争心を煽る。それ以外のライドは、多少の違いはあれど、結局はシアター型で、座席に座ってスクリーンに流れる映像を見て楽しむ。座席が揺れたり風が来たり水滴が飛んできたりするので、擬似的に乗り物に乗っているように感じられる。「Zindagi Na Milegi Dobara」のショーは時間の関係で見なかったが、「Dabangg」のショーでは、自動車やバイクのスタントアクション、宙づり、落下、爆発などがあって、かなりハイレベルだった。

Dabangg: Stunt Spectacular Show

 レストランも「Mughal-e-Azam」や「Rock On!!」のようにボリウッドをテーマにしたものがあるはずなのだが、前述の通り、なぜかクリスマス・シーズンでも営業していなかったので、もしかしたら閉店してしまったのかもしれない。他に、ディズニーランドのシンデレラ城にあたるシンボルとして、ボリウッド・パークスにはタージマハルに似た「ラージマハル」という宮殿があるが、これは中に入れなかった。その前庭で定期的にショーが行われていたので、単にステージの背景として建造されたのであろうか。他に、園内ではボリウッドをテーマにした土産物を購入することができるので、インド映画ファンには堪らないだろうが、厳しいことを言ってしまえば、どれも作りがチープであり、ボリウッドに関連していなければ買う人はあまりいなさそうである。

ラージマハル

 ボリウッド・パークスが開業したのは2016年、プロジェクトの発表は2012年とのことなので、基本的にボリウッド・パークスで取り上げられている映画は、2012年以前に公開されたものばかりである。僕がインドに住んでいたのは2001年から2013年なので、僕はかなりドンピシャ世代だ。

クリシュ(左)とRa.One(右)

 入場したときには閑散としていたが、暗くなるにつれて入場者数も増えてきた。夜になるとラージマハルをはじめとして園内全体がライトアップされ、とてもきれいだった。入場門からラージマハルにかけての目抜き通りを行進するクリスマス・パレードもあった。おそらくインド映画に興味のない人にはほとんど楽しくないテーマパークであろうが、00年代にインド映画を熱心に観てきた僕のような人間にとっては、多少残念な部分も散見されたものの、夢のような時間であった。

ブルジ・ハリーファ

 「世界一」「世界初」が好きなドバイにおいて、もっとも有名な「世界一」はおそらく、世界一高い建造物であるブルジ・ハリーファ(Burj Khalifa)であろう。高さ829.8m、階数206階の記録は、2010年に竣工・開業して以来、10年に渡って世界一を維持してきている。ダウンタウン・ドバイ地区にあり、ドバイ・メトロで行くと、レッド・ラインのブルジ・ハリーファ/ドバイ・モール駅が最寄りとなる。

ブルジ・ハリーファ

 ブルジ・ハリーファの展望台に行くにはチケットを購入する必要があるが、これも事前にネットで日時を指定して予約をしておくと安くなる。展望台は複数あり、チケットの値段も分かれている。展望台をチケットごとに分けると、152-154階、148階、124-125階の3種類になり、低い階にしか行けないチケットほど安くなる。高いチケットを購入すると、下の階の展望台にも行けるが、下の階からの景観になるほどグレートが下がったように感じることに加えて下の階ほど混雑しているので、下の階の展望台に行けることにあまり意味はない。前売りの値段で、152-154階の「高さ585mの世界最高ラウンジ」に行けるVIPチケットは一人約2万円、148階に行けるスカイチケットは一人約1万2千円、124-125階に行ける通常チケットは一人約5千円である。せっかく世界一のタワーに来て、行ける高さまで行かないのは損な気がしたので、奮発してVIPチケット「Breakfast in the clouds」を事前予約し、ブルジ・ハリーファを楽しんだ。152階にあるザ・ラウンジでの朝食ビュッフェが付き、午前9:30から午前11:30まで展望台に滞在できるチケットである。

 ブルジ・ハリーファの入り口はドバイ・モール内にある。ドバイ・モールの営業時間は午前10時からだが、それはモール内の店舗の営業開始時間であり、モール自体には午前10時前から入ることができる。テナント数1200以上、世界最大のショッピングモールであり、中はかなり広い。ブルジ・ハリーファへの入り口は若干分かりにくかったが、何とか午前9:30までに辿り着くことができた。VIP用の列に並んで受付を済ませると、待合室に案内され、そこで少し待った。待合室ではVIPチケットとスカイチケットを持っている人の両方が待っていたが、識別用に服に貼られるシールが異なる。まずは124階で下り、そこでさらに上階へ行くエレベーターに乗り換える。スカイチケットの人は148階で下ろされ、VIPチケットの人は154階まで行く。

154階からの眺め

 154階に着くと、まずは係員からウェルカムドリンクとデーツ入りチョコレートで歓迎される。ブルジ・ハリーファの下階にはジョルジオ・アルマーニが運営するアルマーニ・ホテルがあるが、このザ・ラウンジもアルマーニ・ホテルによる運営である。ザ・ラウンジを構成する152-154階は階段でつながっており、自由に上り下りできる。それぞれの階の外周部に展望スペースがいくつかあり、154階はカクテルテーブル、152-153階はソファが置いてあって、くつろぎながら世界一の雄大な光景を楽しめる。153階には会議室の他に屋外展望台があり、建物の外に出て、ガラス越しではないドバイの眺望を楽しむことができる。

153階

 152階にはソファやテーブルが並ぶスペースがあり、そこで朝食ビュッフェを楽しめる。朝食と言っても、もうここまで来る頃には10時過ぎになっており、昼食のつもりで食べても問題ない。ミニサイズのサンドイッチやマカロンなどの洋菓子が用意されていた。

152階

 152-154階を十分満喫した後は148階にも行ってみたが、こちらでも十分の展望である。ただ、どうしても人は多くなるため、のんびりしにくくなる。124-125階は激混みであった。

ドバイ水族館

 ドバイ・モールは世界最大のショッピングモールであり、世界一高い建造物であるブルジ・ハリーファに連結しているが、もうひとつ世界一のモノがある。それは世界最大の水槽である。これはドバイ・モール内部にあるドバイ水族館(Dubai Aquarium & Underwater Zoo)が擁しているが、水族館のチケットを買わなくても、外から鑑賞することができる。

ドバイ水族館

 何をもって世界最大の水槽とするかだが、どうも水槽の側面を構成するアクリルパネルの大きさ(幅32.88×高さ8.3m×厚さ750mm)が世界最大であるようだ。2008年に開業したとき、それまで世界最大だった沖縄の美ら海水族館のアクリルパネル(幅22.5m×高さ8.2m×厚さ600mm)を越え、ギネスブックに登録された。水槽の容量は、ドバイ水族館が1,000万リットルであるのに対し、美ら海水族館が750万リットルである。ただし、2012年にシンガポールに開業したシー・アクアリウム、そして2014年に中国に開業した珠海長隆海洋王国の水槽 (幅39.6m×高さ8.3m×厚さ650mm )に相次いで抜かされており、現在では世界最大ではないはずである。

アクアリウム・トンネル

 ただ、沖縄、シンガポール、中国などの水族館は、「水族館」として独立した施設の中にある水槽であるのに対し、ドバイ水族館はショッピングモールの中に内包されている点で、それらとは大きく異なる。ショッピングモールに立ち寄った買い物客がついでに楽しめる手軽さがある。その分、水族館としては手狭で雑多な印象を受けた。

水中動物園

 例によってチケットはネットで事前予約をすると安くなる。いくつかの種類があるが、一通り見て回れる「エクスプローラー・エクスペリエンス」というチケットだと、日本円にして約5千円である。巨大水槽の下をくぐる「アクアリウム・トンネル」に加え、グラスボートに乗れたり、水族館の裏側を覗ける短時間のツアーに参加できたりする。しかしながら、日本の水族館もそれぞれレベルが高いので、日本からドバイまで行ってわざわざ水族館で新鮮な体験ができるかというと、そこまでは言い切れないような気がする。前述の通り、世界最大級の水槽は水族館のチケットを買わなくても鑑賞できるので、よっぽど水族館が好きでなければ、ドバイ水族館は優先度を高くしなくてもいいのではないかと感じた。

バーブル・シャムス

 今回のドバイ旅行は短い滞在だったが、短い故に1日1日に多めに資金を投入して濃厚にすることを考えた。最初の2泊はドバイ市街地に位置する交通の便のいいリビエラ・ホテルに宿泊したが、最後の日の滞在先として、ドバイ市街地から自動車で1時間ほどの地点にある砂漠の高級リゾート、バーブル・シャムス(Bab Al Shams)リゾート&スパを選んだ。

バーブル・シャムスの入り口

 「バーブル・シャムス」とはアラビア語で、「太陽の門」という意味である。ドバイには同様の高級砂漠リゾートがいくつかあるようだが、このリゾートを選んだのは、何となくネーミングが気に入ったからだ。「砂漠」というと、気ままな風によって造形され装飾された砂の丘が地平線の彼方まで連なるクリーム色の大地を思い浮かべがちだが、そのようなシンプルな砂漠があるところは実は限られているようで、バーブル・シャムスの周囲の砂漠も、所々樹木や草が生えていたり、石や岩が転がっていたりと、騒がしい印象を受ける。

このような砂漠はホテルから離れないとない

 バーブル・シャムスの建物や内装はアラビアン・スタイルで、ドバイ旧市街に残る建物を意識しながらモダンに仕上げている。迷宮のような作りで、ボンヤリ歩いていると戻れなくなる。所々にソファなどのリラックスできるスペースがあって自由にくつろげ、しかもエキゾチックな雰囲気で、フォトジェニックである。

客室エリア

 宿泊したのはジュニア・スイート。スイート以外の通常の客室の1部屋あたりの許容人数は2名だったので、4人家族で宿泊しようとすると、2部屋に分かれて泊まるよりも、4名まで宿泊できるスイート1部屋に宿泊した方が安かったからだ。天蓋付きキングサイズのベッドがひとつ、ソファ・スペースが2つ、屋外にテラスなど、かなり豪華な部屋だった。

ジュニア・スイートの寝室

 敷地内の一角には砂漠を臨む屋外温水プールがあり、プールに浸かって砂漠をぼんやりと眺める贅沢を堪能できる。プールは外縁を水で覆ったインフィニティ・プールで、あたかもプールがそのまま砂漠に続いているかのように見える。

屋外温水プール

 また、敷地内には複数のレストランがあり、アラビア料理、インド料理、イタリア料理などが提供されている。その内、アル・ハディーラ(Al Hadheerah)というアラビア料理レストランで夕食を食べた。ベリーダンスやラクダ劇などのショーがセットになっており、食事はビュッフェ・スタイルで、全て食べ切れないほどの品数であった。

アル・ハディーラのベリーダンス・ショー

 他に、ラクダに乗ったり、砂漠を4WDで疾走したりと、砂漠ならではのアクティビティに参加することもできる。バーブル・シャムスが提供する数々のアクティビティの中で、一番気になったのは、鷹狩り(Falconry)であった。インドをはじめ、他の国の観光客向けアクティビティではあまり聞いたことがなかったので、挑戦してみた。挑戦してみた、と言っても、実際に鷹を使って狩りをするわけではなく、鷹を腕に留めてエサをやる体験ができるくらいだ。あとは、鷹狩りマスターが鷹を飛ばす様子を観察させてもらう。アラブ首長国連邦では鷹狩りが盛んのようであるが、我々に鷹狩りを見せてくれたマスターはパキスタン人であった。

鷹狩り

総括

 覚悟はしていたが、ドバイは金を使えば使うほど楽しめる国である。逆に言えば、金がなければないなりに楽しめるという種類の国ではなさそうだ。とにかく節約して生きている出稼ぎ労働者がたくさんいるので、金を使わずに生活することは可能であろう。だが、観光で来てケチケチするのは逆に損をする。使うべきところで使うべき国だ。

早朝のバニヤス・スクウェア

 従来、家族で海外旅行をするときは旅行代理店にスルーガイド付きの個人向けプランをお願いしてきたが、今回は航空券からホテルまで、全て自分でネットを使って手配をしてみた。2019年7月、ウクライナに1人で行ったときに、全てネットで手配するタイプの旅行を練習し、問題なかったので、今回は遂に家族旅行にもそれを適用してみた。

ダウンタウン・ドバイ

 実は、自分で手配する前に、とある旅行代理店が出していたドバイ旅行プランを目にし、気に入って問い合わせをしていた。だが、そのプランでは家族旅行が想定されておらず、子供の航空券が子供料金にならなかったり、その他いろいろ融通が利かなかったりしたので、キャンセルし、その旅行プランと同じ旅程を自分で予約をした。そうしたら、旅行代理店が出してくれた見積もりよりも4人まとめて20万円以上安くなった。そういうこともあって、少し贅沢に旅行を組み立てる精神的・経済的な余裕ができた。

ドバイ・クリーク

 ウズベキスタンイランでの旅行のように、都市から都市への移動の多い家族旅行なら、経験値のある旅行代理店に任せた方が無難だが(そんな家族旅行をする家族はあまりいないかもしれないが)、今回のドバイ旅行のように、基本的にひとつの都市に留まって観光するタイプの家族旅行なら、もはや旅行代理店は必要ない。航空券もホテルも、ネットを通じて予約した方が断然安い。ホテルの公式ウェブサイトから予約することで恩恵が得られることもある。現に、バーブル・シャムスでは公式ウェブサイトからの予約宿泊者を優遇しており、レストラン割引やアクティビティ1つ無料など、至れり尽くせりのサービスを受けることができた。ドバイの多くの観光地も、事前にネット予約することで割引が受けられる。

バスタキヤの路地

  ドバイは、まだ多くの日本人が訪れるような場所ではなく、どちらかというと乗り継ぎに空港だけ立ち寄る人が多い印象である。しかし、 観光資源は十分にあり、ドバイを目的地とする旅行ももっとあっていいだろう。さらに、2020年10月からはドバイ国際博覧会がある。今後、注目を集める国になりそうだ。

2020年2月16日 | カテゴリー : 旅誌 | 投稿者 : arukakat