人物像

管理人略歴

 前世紀末からアルカカットを名乗り始める。2000年には、インドの神様で遊ぶ罰当たりなウェブサイト神聖インド帝国を立ち上げ、インド神話とウェブサイト作りの基本を独学する。2001年に一念発起してインドに留学、2013年までインドの首都デリーに住む。その間、ヒンディー語の習得、研究に勤しむ傍ら、インド留学日記ウェブサイトこれでインディアを主宰し、一世を風靡する。当時インドは劣悪なネット環境にあり、現地から日本語でリアルタイムに情報を発信するサイトとしては先駆者であった。しかし、その後ネット環境も整い、ブログやSNSなどの普及によって情報発信は格段に容易となったため、その革新性は年々薄れて行った。また、2004年には派生ブログとしてこれでインディア エクスプレスも始めるが長続きせず、開店休業状態。2013年にヒンディー語博士号を取得し日本に帰国した後、WordPressの基本の基本を大急ぎでかじって本ブログを立ち上げ、現在に至る。

バハードゥルシャー勝(まさる)とは?

Bahadur Shah Zafar

 日本帰国後、しばらくはウェブサイト定期更新の義務から解放され、悠々自適の生活を送っていたが、半年も経つとまた次第に何かを書いて発表したくなり、ブログを立ち上げることにした。その際、「これでインディア」の名前を踏襲するかどうか悩んだが、一応「インド留学日記」を銘打ったサイトであり、11年以上に及ぶ留学生活が終わった今、このサイト名をそのまま使い続けることを潔しとせず、新たな名前を考えることにした。

 実は、名前を考えるのは苦手である。「これでインディア」にしても、サイト立ち上げの際にとりあえずのつもりで付けた苦しいダジャレ(これでいいのだ→これでインディア)をそのまま使い続けることになってしまった。しかし、あまりに格好良すぎるサイト名というのも後から小っ恥ずかしくなるもので、ふざけたような真面目なような、その微妙なラインを行き来する名前が好みである。そういう意味では、「これでインディア」はいい線を行っていた。何より、図らずもインドを肯定する名前になっていたのは幸いであった。

 既に日本に帰っているので、インドに限定したブログにはしたくなく、題名に「インド」やそれに類する言葉を入れたくなかった。しかし、やはりインドを捨て去ることはできないので、インドらしいエッセンスが含まれたものにしたかった。悩んだ挙げ句、最終的には「バハードゥルシャー勝(まさる)」に決まった。

 この名前は、ムガル朝最後の皇帝バハードゥルシャー・ザファルから来ている。1775年に生まれ、1837年にムガル朝皇帝に即位したが、このときムガル帝国の版図はほぼデリーのみに限られていた。かつてインド亜大陸の大部分を支配したムガル帝国を受け継いだにも関わらず、彼の実際の地位は「デリーの王」程度のものであった。ザファルに対するインド人一般のイメージは「悲劇の老いぼれ皇帝」に近いものがあるが、英国人作家ウィリアム・ダルリンプル著「The Last Mughal」では、実は標準以上の統治能力を持った支配者であったことが緻密な研究の上に証明されている。1857年には、インド大反乱に荷担した罪で英国東インド会社によって皇帝の地位を剥奪され、ムガル朝は滅亡する。その後、彼はラングーン(現ミャンマーのヤンゴン)に流刑となり、当地で1862年に死去した。

 長年住み慣れたデリーを去って異国の地に住むことになったザファルの人生は、自分と立場が似ていたことから、ブログの名前として彼の名前を拝借することを思い立ったのである。

 バハードゥルシャー・ザファルは皇帝であると同時に当代一流の詩人であり、「ザファル」は彼の雅号であった。皮肉なことに、これは「勝利」を意味する。これを「勝(まさる)」という日本名に置き換えてみると面白いのではないかという電撃的ひらめきが、このブログ名の元となった。音も似ているし、意味もピッタリだ。

 また、ザファルの名誉のために付け加えておくが、このブログの冒頭に掲げられているガザル詩は、他でもない、ザファルのもので、しかも彼の詩人としての実力を証明するもっとも有名な詩である。インドの古典的な韻文には、詩文の中に作者の雅号が組み込まれることが多く、ガザル詩もその例外ではない。冒頭の詩は、本体そのままに、雅号「ザファル」の部分を「勝」に変えただけで、普通に考えたら剽窃になってしまうのだが、ここまで詳しく解説した上での使用であるので、トリビュートを含んだパロディーとして受け止めてもらえれば嬉しい。日本語訳に関しては、現在の自分の立場や心情なども込めた大胆な意訳とし、脚韻も踏んでみた。

Bahadur Shah Zafar

 2014年12月29日、ミャンマーのヤンゴンにあるザファルの廟を参拝することができた。そのときの様子は旅誌Yangon (Myanmar)にまとめてあるのでご参照いただきたい。こんなブログ名を使っていることを許してもらえただろうか。

ザファル廟参拝

著書など

 インド映画研究家またはヒンディー語映画研究家を名乗ることがある。インド映画、主にヒンディー語映画について記事を書いている。映画パンフレットなどの解説文が多いが、以下の著書もある。2015年の「インド映画完全ガイド」(世界文化社)でも多数の記事を書いた。

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