[dropcap]2[/dropcap]008年に「Ghajini」がヒンディー語映画として初めて10億ルピー以上のコレクション(国内興業収入)を上げて以来、ヒンディー語映画業界では「100カロール・クラブ」という用語が好んで使われるようになった。「カロール」とはヒンディー語の数字の単位で1000万を表す。「100カロール」で10億だ。つまり、10億ルピーの興行収入を上げた作品がこのクラブ入りを許されるのである。興行収入を計算する際、海外のものを含めるか否かで数字が変わって来てしまうのだが、ここでは国内の興行収入のみを対象としている。
「100カロール・クラブ」という用語が誕生して以来、インフレの急激な進行によってチケット単価が上昇し、見掛け上、興行収入も増加して来た。既に2009年には「3 Idiots」がコレクション20億ルピーを突破し、初めて「200カロール・クラブ」入りしていたが、しばらくは10億ルピーを越える国内興業成績を上げる映画は年間数本しなかった。この頃、10億ルピーは「大ヒット」の指標であった。それでも、物価の上昇が進むことで、徐々に飛び抜けて優れた作品でなくても10億ルピーを越えるようになって行き、2011年あたりから10億ルピーが「大ヒット」と言うよりも「ヒット」の指標に変化して行った。
2014年には「PK」が初めて30億ルピーのコレクションを稼ぎ出し、遂に「300カロール・クラブ」まで創設された。
さて、6月3日付けのデリー・タイムスに、これまでクラブ入りを果たした作品がリストアップされていたので、ここ7-8年の状況をザッと振り返る意味でも、それらを転載してみたい。
■300カロール・クラブ(国内興行収入30億ルピー以上)
- 「PK」 2014年
■250カロール・クラブ(国内興行収入25億ルピー以上)
- 「Dhoom: 3」 2013年
■200カロール・クラブ(国内興行収入20億ルピー以上)
- 「3 Idiots」 2009年
- 「Chennai Express」 2013年
- 「Kick」 2014年
■150カロール・クラブ(国内興行収入15億ルピー以上)
- 「Ek Tha Tiger」 2012年
- 「Dabangg 2」 2012年
- 「Yeh Jawaani Hai Deewani」 2013年
- 「Krrish 3」 2013年
- 「Happy New Year」 2014年
■100カロール・クラブ(国内興行収入10億ルピー以上)
- 「Ghajini」 2008年
- 「Dabangg」 2010年
- 「Golmaal 3」 2010年
- 「Singham」 2011年
- 「Bodyguard」 2011年
- 「Ready」 2011年
- 「Ra. One」 2011年
- 「Don 2」 2011年
- 「Agneepath」 2012年
- 「Housefull 2」 2012年
- 「Rowdy Rathore」 2012年
- 「Bol Bachchan」 2012年
- 「Jab Tak Hai Jaan」 2012年
- 「Barfi!」 2012年
- 「Bhaag Milkha Bhaag」 2013年
- 「Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela」 2013年
- 「Jai Ho」 2014年
- 「2 States」 2014年
- 「Ek Villain」 2014年
- 「Holiday」 2014年
- 「Singham Returns」 2014年
- 「Bang Bang!」 2014年
- 「Tanu Weds Manu Returns」 2015年
これを主演俳優別にしてみると、クラブ入りを果たした作品数が多い俳優は以下の通りとなる。
- サルマーン・カーン 7本
- シャールク・カーン 5本
- アーミル・カーン 4本
- アジャイ・デーヴガン 4本
- アクシャイ・クマール 3本
- リティク・ローシャン 3本
- ランビール・カプール 2本
- ファルハーン・アクタル 1本
- ランヴィール・スィン 1本
- アルジュン・カプール 1本
- スィッダールト・マロートラー 1本
- カンガナー・ラーナーウト 1本
やはり国内に厚いファン層があり、出演作も多いサルマーン・カーンが圧倒的に有利で、7本の映画をクラブ入りさせている。海外にファンの多いシャールク・カーンも健闘しており、5本のクラブ入り作品を持っている。アーミル・カーンは4本だが、彼については作品数のみで評価するのはフェアではないだろう。初めてコレクション10億ルピーを突破した「Ghajini」は彼の主演作であるし、初めて20億ルピーを突破した「3 Idiots」と初めて30億ルピーを突破した「PK」も軒並み彼の作品だ。別格として扱った方がいいだろう。
以下、ざっと今を代表する俳優が並んでいるが、異色なのはカンガナー・ラーナーウトである。通常、映画の成功は主演男優の功績とされるが、最近は女優中心の映画も増えて来ている。初めて100カロール・クラブ入りする女優中心映画を出すのは誰かと期待していたが、最近調子の良いカンガナーがその栄冠を勝ち取った。一時は「Kahaani」(2012年)などのヴィディヤー・バーランが最有力かと思われたし、プリヤンカー・チョープラーも「Mary Kom」(2014年)で健闘していたが、万人受けする娯楽作品にも律儀に出演するカンガナーに軍配が上がった。
監督別にしてみると、意外なことにローヒト・シェッティーが「Chennai Express」、「Singham」、「Bol Bachchan」、「Singham Returns」の4本でトップに躍り出る。確かに彼の路線の映画はインドの観客に受けているが、何か飛び抜けて優れたところがある監督でもないので、これでいいのかとも思ってしまう。
次点に付けているのがラージクマール・ヒーラーニー。ヒンディー語映画界でもっとも尊敬を集めている映画監督であり、この結果に誰も異議を唱えないだろう。「PK」と「3 Idiots」の2本がクラブ入りしている上に、それぞれ300カロール・クラブと200カロール・クラブに入っており、格が違う。同じく2本の映画をクラブ入りさせているのは、主にタミル語映画界で活躍するARムルガダース。「Ghajini」と「Holiday」がどちらも10億ルピー以上の興行成績でクラブ入りしている。
他に複数の映画をクラブ入りさせている監督はいない。だが、これも時間の問題であろう。
ピンバック: 大ヒット映画”Tanu Weds Manu Returns”鑑賞(イラスト付) | SHANTI INDIA!!