「インド映画完全ガイド」出版のお知らせ

[dropcap]過[/dropcap]去に日本でインド映画ブームは何度か来ているらしいのだが、僕が知っている限りでは、1998年に日本で劇場公開された「ムトゥ 踊るマハラジャ」(Muthu, 1995年)からの数年間が第一次のインド映画ブームであり、2013年に日本で劇場公開された「きっと、うまくいく」(3 Idiots, 2009年)前後からのインド映画上映数急増期が第二次のブームである。

 2015年に入り、インド映画熱は若干冷めて来ているように感じるものの、「ミルカ」(Bhaag Milkha Bhaag, 2014年)、「女神は二度微笑む」(Kahaani, 2012年)、「フェラーリの運ぶ夢」(Ferrari Ki Sawaari, 2012年)、「インド・オブ・ザ・デッド」(Go Goa Gone, 2013年)、「若さは向こうみず」(Yeh Jawaani Hai Deewani, 2013年)、「愛するがゆえに」(Aashiqui 2, 2013年)と既に6本が劇場公開されており、今後も「マルガリータで乾杯を!」(Margarita with a Straw, 2014年)などの公開が決まっている。

 ブームは映画の公開本数のみならず、出版物にも影響を与えるものだ。確か「ムトゥ」の頃もインド映画本が何冊か相次いで出版されたと記憶している。今回もご多分に漏れず、世相を反映したインド映画本が準備された。それが「インド映画完全ガイド」(世界文化社)である。監修はアジア映画研究家の松岡環氏。「インド映画」と銘打つ以上、ヒンディー語映画(ボリウッド映画)のみならず、インド全土の主要な映画界を網羅している。価格は2,000円+税。10月8日頃に書店に並ぶだろう。

The Perfect Guide to Indian Cinema

 

 目次は以下の通り:

  • 序章:いま、インド映画が来てる!
  • 第1章:インド映画のここに注目!
  • 第2章:インド映画のスター
  • 第3章:見ておきたいインド映画ベストセレクション
  • 第4章:インド映画の全貌
  • 第5章:インド映画の多様な要素
  • 第6章:インド映画を知るためのデータと資料

 ちなみに、この本で紹介されている映画は、主に最近公開された作品だ。一番古い作品で1995年の「ムトゥ」や同じく1995年の「ボンベイ」(Bombay)になる。これらは1998年以降に日本で劇場公開されている。最新の作品は、インド本国での公開年が2013年、日本での公開年が2015年の作品となる。僕の言う、第一次インド映画ブームから第二次インド映画ブームに掛けての作品を、少なくとも今現在まで、網羅していると言っていい。

 実は今回、この本にいくつかの記事を寄稿させていただいた。僕はほとんどヒンディー語映画しか観ていない、フィールドの狭い自称「インド映画研究家」であるため、主にヒンディー語映画に関する記事しか書いていない。だが、インド映画のスタンダードはヒンディー語映画であること、また、近年の日本でのインド映画ブームがヒンディー語映画を中心に展開していることを考慮すれば、役割は決して小さくなかった。いくつかのヒンディー語映画の紹介に加え、以下の小論を書いた。どれも字数制限が厳しく、また、インド映画に明るくない一般の読者を想定していたため、それほど深く掘り下げた文章になっていないが、どんな層の人に対しても何か有意義な情報が提供できていれば幸いである。

  • ヒンディー語映画のいま
  • 映画と検閲
  • 観客とその国民性
  • 宗教
  • 政治問題

 今後もインド映画が日本でコンスタントに公開され、ファン層の裾野が広がって行けば嬉しいし、この本が、少しでもインド映画に興味を持ってくれた人にとって、新たな世界への道しるべになってくれればと願っている。まだ他の執筆者の記事を読んでいないので、僕自身も読むのがとても楽しみだ。様々な分野に携わっている人々から選りすぐられた、非常に豪華な執筆陣だ。

 書店で見掛けたら是非手にとってみていただきたい、というほどに出回らないと思うので、インド映画ファンはAmazonなどで注文するのが吉であろう。

2015年9月19日 | カテゴリー : ブログ | 投稿者 : arukakat